高畠華宵大正ロマン館
高畠華宵生誕120年 華宵のこども絵展?ファンタジー世界のこどもたち?

 本年は高畠華宵(愛媛県宇和島市出身/1888-1966)の生誕120年にあたります。それを記念して、高畠華宵大正ロマン館ではこれまでほとんど注目をされていなかった作品群、華宵が描いた「こども絵」にスポットをあてた展覧会を開催します。

 華宵が描いた「こども絵」としてこれまでも何度か展覧会等で取り上げられているのは、戦後の講談社絵本シリーズ(『小公女』『しあわせの王子』『星の子』『雪の女王』『ヘンゼルとグレーテル』など)で、大正ロマン館には極彩色の原画が残されています。しかしほとんど知られていないのが、大正11年から12年というごく短期間に『金の船』という児童向け雑誌に描いた「こども絵」です。これらは華宵のロマンチックな美少女とも、両性具有的な美少年とも、華麗な女性とも趣が異なる作品群です。

 大正7年に児童向け雑誌『赤い鳥』が発刊されますが、これが日本における児童文学の先駆けとされ、同時代の様々な作家や著名な文人が詩や物語を提供していました。この『赤い鳥』が大正時代やそれ以後の児童文化に大きな影響を与えたことはよく知られていますが、華宵が描いた『金の船』という雑誌もまた『赤い鳥』と同時期に発行され、数多くの著名な文士(野口雨情、室生犀星、正宗白鳥など)が子ども向けの童話、童謡を書いた雑誌です。この『金の船』誌上で、華宵は表紙・口絵・挿絵などを描き、時には一冊すべてが華宵の作品で埋め尽くされたこともありました。しかし残念なことに、この『金の船』(華宵が挿絵を描いていた時期のもの)は現存する部数が極めて少なく、全国の図書館・博物館・文学館などにもほとんど収蔵されていません。

 今回の展覧会では、華宵が描いた珍しい「こども絵」の数々を展示して、その特徴や世界観を紹介すると共に、大正時代の児童文学雑誌『金の船』を徹底解剖します。また戦後の児童向け絵本原画も展示します。

 華宵が描いた「こども」たちは、愛くるしさや無邪気さだけではなく、時に幼児特有の不気味さや不可思議さを感じさせるものもあります。それは単に華宵の画風上の個性というものにとどまらず、ある種の普遍的なこども観へとつながっているようにも思われます。

 この展覧会が、華宵の「こども絵」を観賞する機会になるとともに、改めて「こども」について考えるきっかけになれば幸いです。

日付 2008年4月5日(土) 〜 2008年6月30日(月)
開催時刻 午前10時-午後5時
会場 高畠華宵大正ロマン館  地図情報はこちら
入場料 一般(中学生以上)500円(20名以上の団体は400円)、小学生300円、身体障害者手帳をお持ちの方400円、「華宵会」会員無料 
お問い合わせ先 高畠華宵大正ロマン館 tel:089-964-7077、e-mail:museum@kasho.org 
備考 共催:華宵会
協力:財団法人 日本近代文学館
後援:愛媛県、東温市教育委員会、愛媛新聞社
会期中イベント「大人のための読み聞かせ?原画と朗読で楽しむ「しあわせの王子」?」 

  • 『金の船』表紙
    大正12年10月号
  • 写真3
    《仲よくネ》
    『金の船』口絵/大正12年頃 

団体情報

住所 〒791-0222  東温市下林
連絡先 TEL:089-964-7077   FAX:089-964-7222   E-MAIL:museum@kasho.org
ホームページ http://www.kasho.org
主な活動内容 高畠華宵(宇和島市出身、1888-1966年)の画業の検証、紹介を活動の中心としています。
12,000点を超える館蔵品による企画テーマ展、華宵以外の画家を主に紹介する特別展を
一年に各2回づつ行っています。